会社との距離感を保って生きることのススメ

小津安二郎の映画などには、よく会社で働く人の場面が出てきます。

そういったシーンを見ていると、むかしの日本における会社と社員の関係はとても幸福な関係であったことがよくわかります。

 

高度経済成長という時代背景をバックに日本は長いあいだ、会社と社員の幸福な関係が維持されてきました。

手厚く保護され、滅多なことではリストラなんかには遇わずに済んだ当時のサラリーマン。

もしもそんな時代にサラリーマンをしていたら、僕たちもきっと自分が勤める会社のことをもっと愛情を持ってとらえていたことでしょう。

 

おそらく僕も「会社を辞めて起業する」なんて道は選択しなかったかもしれません。

毎日の生活が満たされていればわざわざそこから飛び出していく必要なんかないわけですから・・

 

しかし、僕の場合、(幸か不幸か)そんなノンキなことは言ってられませんでした。

いつどうなるかわからない。

これは当時僕がサラリーマンをしながら、毎日考えていたことです。

 

そんな不安を抱えながらそれでも会社のために自分を殺して働かなければならない現状。

僕はそれに耐えきれなくなったので脱サラする道を選択したのです。

 

それは僕がわがままだったせいもあると思います。

こらえ性がなく、根性なしのせいもあると思います。

一方的に「会社が悪い」と言い切れない部分もたくさんあると思います。

 

だけど、ふと小津安二郎の映画なんかを観ていると(そういえば、勤めているときにはゆっくり小津の映画を観賞するような心の余裕もなかったなぁ)こんな風に思ってしまうんです。

「ああ、オレと会社の関係は、全然こんな感じじゃなかったなぁ・・」と。

 

まあ、そういう幸福な関係じゃなかったおかげで、こうして自由で幸せな毎日をおくれているわけですから今となってはどっちが良かったのかわからなくなってしまいましたけど。

 

今、僕は会社を経営する立場になりました。

そこで見えてきたことがあります。

テレビのニュースなどではリストラや、賃金・ボーナスのカット、非正規社員の増加などが問題になります。

 

だけど、会社なんてものをやっていると「そこに手を突っ込まなければならない」という局面がやってきたりするものです。

ボンボン売上が上がり、経費もそれほどかからず、内部留保がどんどん貯まっていく。

いつの時代も、これが会社経営の理想です。

 

だけど、すべての会社がそんなふうに順風満帆にいくとは限りません。

「思うように売上が伸びない」「突発的なことが起こって予定になかった出費が発生した」なんてことはザラにあります。

 

そんなとき、経営者はなんとか会社を立て直そうと考えます。

いちばん手っ取り早い方法は人件費に手をつけることです。

 

急に売上を2倍、3倍にするなんてことはできません。

何か新商品を開発し、それが爆発的に売れたりなんかすれば話は別ですが、そんな一発逆転劇は普通の会社ではまず起こり得ません。

だから経営者はいちばん確実で、いちばん効果があり、いちばん即効性がある方法を選択します。

 

そして、それをいちばん可能にするのが「人件費のカット」なのです。

僕は自分が会社を経営する立場になってみて、なぜ世の中の会社の社長さんが困ったらすぐに人件費を削ろうとするのかがよくわかりました。

 

以前の僕は「リストラをするなんて、なんてひどいことをする会社なんだろう…」なんて考えていました。

だけど、会社は会社で生き延びるために必死で、本当は従業員をリストラなんかしたくないけど、やむにやまれずそういった選択をしてしまうのだ、ということをわかっていませんでした。

 

昔の会社はそんなことをする必要がなかった。

だから、会社と社員は良好な関係が築けたのです。

時代は変わったのです。

 

過剰なまでの愛社精神は会社にとっても迷惑!?

むかしのことをいつまでも懐かしがっていたり、羨ましがっていても何にもなりません。

僕たちは今に生きています。

大切なことは、「どうやって現代をうまくサヴァイヴしていくか?」ということです。

 

もう会社と社員の幸福な時代は終わってしまいました。

終身雇用も、年功序列も、遠い過去のものとなってしまいました。

現代の会社は、ちょっとでも業績が悪化すると簡単に従業員をリストラしてしまいます。

それが最も手っ取り早く、最も確実に会社の業績をアップさせる方法だからです。

 

IT化がすすんだことによりそもそも会社は「社員」というものをそれほど必要としなくなってしまいました。

もし雇用するにしてもそれが「正社員であらねばならない」という縛りもなくなってしまいました。

 

言うまでもないことですが、正社員を雇うより、非正規社員を雇った方が会社は都合がいいのです。

給料もたくさん払う必要もないし、社会保険料も負担する必要もありません。

 

会社というのはそういった具合に「なるべく経費を抑えたい」と考えるものなのです。

そんな時代に生きている僕たちは、いったいどうすればいいのでしょうか?

 

僕がいちばん驚いたことはそんな時代にもかかわらず、まだ会社に対する帰属意識が強い人がたくさんいることです。

どう考えてみても、今の時代、会社のために自分を殺して働くことに合理性はありません。

それなのに、会社に忠誠心を誓い、身も心も会社に捧げて生きるサラリーマンのお父さんがたくさんいます。

 

会社の方もそんなことは望んでいないかもしれないのに・・

「そんなにグイグイ来られても、重いよ」

会社の方もそこまで責任を負いたくはないのです。

 

なぜなら、「オレの方もいつどうなるかわからないからお前のことも責任持てないんだよね」という背景があるからです。

 

会社と社員の関係はもっと自由でもいい!

これからは会社と社員の関係は、もっとドライになっていいのではないでしょうか?

フランスでは未婚のカップルというのが大勢います。

結婚という制度に縛られず、お互い「自由」と「個人の尊厳」を大切にする。

それでも、そこには愛があり、リスペクトがあり、幸せがある。

 

本当に成熟した社会、成熟した関係というのはそういうことをいうのではないでしょうか。

会社と社員の関係もそんなふうになれないものでしょうか。

 

どちらかがどちらかに「依存」するのではなく、かといって「突き放す」のでもない。

もちろん関係が継続しているあいだはお互いに真剣にお付き合いはするが、もしも新しいパートナー(転職先)が見つかったら、いつでもそちらに移ることができる。

さらに、また戻ってくることもできる。

 

お互いにはお互いの考えというものがあり、お互いはそれを何よりも優先する。

どちらかがどちらかを支配するのではなく、きちんとお互いが自立した関係。会社と社員の関係もそんなふうに「適切な距離」をキープした関係にした方がいろんなことがうまくいくのではないでしょうか。

 

いろんな会社をポンポン渡り歩いても構わない。

というか、それがむしろ当たり前の社会。業種もひとつに絞らず、いろんな業種の仕事をしてもいい。

 

ひとつのところに留まっていたら、どんどん視野が狭い人間になってしまいます。

自由な発想で、柔軟に、広い視野で世の中をみることができる人。

もしかしたら、そういう人がもっとたくさん増えることが今、いちばん必要とされていることなのかもしれません。

 

だけど、現実はそんなふうな社会にはなっていません。

ポンポンポンポンいろんな会社を渡り歩くことは日本の社会では全然良しとされていません。

 

どんなに「自由を!」と思っていたとしても、社会が自由なんて求めていなければどうしようもありません。

だったら、自分で道を切り開くしかありません。

そのガチガチに凝り固まった世界から飛び出すしかありません。

 

それは簡単なことではありません。

だけど、少なくとも僕は思いきって堅苦しい世界から飛び出したことによって自由と幸せを手にすることができました。

 

 

スポンサーリンク